1995年11月22日ーーー
佐賀県の山と田んぼに囲まれる静かな町に、赤ん坊の産ぶ声が響いた。
愛情たっぷり放任主義の母親と、変わり者の父親(趣味は日本刀集め。私への歴代プレゼントは一本ゲタ、短刀。幼少の娘に山を速くくだる走り方を教授。)のもとで、坂牧真の人生が幕を開けた合図だった。
小さい頃は、争い事や人の怒りが苦手で、誰とでも仲良くし、わがままも言わない子どもだった。
反面、大のビビりで、「オバケがくるよ」と言われれば何でもいうことを聞き、毎日「北朝鮮のミサイルが飛んできたらどうしよう」と恐れながら過ごしていた。
中学では陸上部に所属。中長距離を専門に毎日本気で練習に励み始める。
この頃になると、さすがにオバケや北朝鮮は恐れなくなったものの(この時期北朝鮮の核実験は結構大人しかった)、次は「人に嫌われること」を恐れるようになっていた。 生粋のネガティブ野郎である。
そんな中、人生のターニングポイントが訪れた。
部活内でハブられたのだ。
「人に嫌われたくない」と常々思っている人間がハブられたのであるから、当人の打撃は大きい。
元々思考癖のある私は、なぜこうなったのかと悶々と考えていた。 時に母親に相談し、思考し続けた結果、ひとつの結論に達した。
「私はハブられた側の気持ちを知れたんだ。これから私は、人に優しくできる。ハブられたことには、意味があったんだ」
この時に、「起こる出来事すべてに意味があるのだ」という価値観が私の中で形作られた。
すべてに意味があるのだとすれば、善悪という概念があやふやになってくる。私が今まで恐れてきた「悪いこと」は、もしかしたら「悪いこと」じゃないのかもしれない。ならば、恐れる必要はないじゃないか。
それから、恐れてばっかりだった私が、少しずつ変わり始めることになる。
ーーそして時が経ち、大学生。
考え方が変わり、ポジティブ人間に変わってきた私は、行動力と向上心を手に入れていた。
お金や時間もたっぷりある今の時間を、なにか有効に使えないかと考え、世界一周することを決意。
「若いうちに色んな人に出逢って、色んな価値観に触れて、心の幅を広げよう!」 その思いを胸に、5ヶ月間の旅に出た。
この旅が、後のインビジョンとの出逢いに深く関係していくのである。
大学3年生秋、本格的に就活を始めた頃、私はある会社と出会っていた。(まだインビジョンには出逢っていない)
自分の弱さにひたすら向き合わせ、厳しいながらも成長を応援してくれる会社だった。
「この会社に行ったら、成長できるんだろうな。成長したいなら、行くべきだろうな」そんなことを考えながら、どうしても苦しい気持ちが拭えなかった。
どうしてこんなに苦しいんだろう?本当に私はこの道を進むべきなのだろうか?
その悩みを相談しに、ある女性の方に会いに行くことにした。
・・・そう。
この方がきっかけで、後々私はインビジョンという会社に出逢うことになる。
この方が「いい会社があるよ」と紹介してくれたのだ。
このエピソードを伝えるにあたって、そもそも私が彼女に出逢ったきっかけを語らねばなるまい。
時は、当時から1年前にさかのぼる。世界一周中、私がアメリカにいた頃である。
私はある格安ホテルに滞在していた。
2泊目の朝、ドミトリーで同じ部屋だったおじさんに、靴を盗られたところから運命が動き始める。
靴を盗られた私は、つたない英語でホテルの従業員に部屋の移動をお願いした。
移動先では、何事もなく過ごせますように…そう思いながら扉を開けた先で、笑顔輝く女性が話しかけてきた。「あ、もしかして日本人??」
久しぶりに会う日本人が嬉しく、互いに会話も弾み、連絡先を交換した。
その彼女に、帰国後会いに行ったのである。
たまたま泊まったホテルで、
たまたま靴をとられて
たまたま部屋を移動した先で会った人に
たまたまインビジョンのことを教えてもらい
インビジョンを訪れた。
つまり、インビジョンと私が出逢えた理由は、たくさんの偶然(必然と呼べるのかも)と人との繋がりが生んだ"ご縁"の一言に尽きるのである。なんて素敵なのだろう。(と、自分で言う…笑)
ーーそしてついに、インビジョンの皆との出逢いの時がやってきた。
「「「あぁ、この人達好きだなぁ。」」」
皆に会った時、頭で考えるより先に、私の心がそう呟いた。
社員の皆やコーポレートサイト、選考動画など、いたるところから溢れ出ている圧倒的なありのまま感、働くことに対するキラキラ感、漂うほっこり感、優しさ。
「これをすべきだ」「成長せねば」と、自分の弱点ばかりに目を向け、自分にたくさんムチを打ってきた私に、「大丈夫。ありのままでいいんだよ。」と背中を押してくれたような気がした。
今までの苦しさがスッと抜けた気がした。
自分の道が開けていくような気になった。
「自分にムチを打って、苦しむのはもうやめよう。ありのままの自分を好きになりたい。」
私は心の中で、本当はずっとそう願っていたのだろう。
お酒を交えて、働くことや理念、それぞれの想いについて社員の皆と語り合いながら、「この人達と働きたい。」本気でそう思った。
「これをすべきだ」「成長せねば」と、自分の弱点ばかりに目を向けて自分にたくさんムチを打ってきた私。
「(恵まれているはずなのに、なぜか)生きづらい」と思い続けてきた。
だけどそれは結局のところ、環境のせいでもなんでもなくて、ただ自分で自分の首を締めていただけのこと。
自分で設定した条件をクリアして”完璧”になれたらOK、そうでない自分には価値がないと無意識に思い込んでいたのだ。
私の人生のテーマは、自分自身を愛すること。
私に限らず、きっとこれが人の本質的な幸せなのだと思う。
面白いことに、この世は全てが捉え方の世界だ。そしてその捉え方は、100%自分によるもの。
言い換えれば、目の前の世界は全て自分がつくってる。
幸せは条件付きではない。捉え方と選択次第で、たった今から幸せになれるし、自分のことを好きにもなれる。
私のように、自分で自分にムチを打ち、自分を愛せずに苦しんで、生きづらさを感じる人たちがこの世界には多すぎる。
自分の心が満たされず、「愛が欲しい」と愛を求めて人は不健全な行動をとってしまう。
皆、自分に厳しすぎるのだ。全員が、本当はもっと自分自身に優しく在っていい。
皆が自分自身を愛せれば、この世界はもっと平和に、もっと素敵になるのだと思う。
心を癒し、人が自分自身を愛せるきっかけに、私がなりたい。
インビジョン 出逢いの始めは 世界旅
染み渡ってゆく 人の繋がり