「新人vsベテラン」分かり合えない原因を構造化してみた。

2024/5/28
2024/5/28

うちの会社では、新人ともベテランともいえない、今年32才・中堅の貞光智菜です。インビジョンの戦略人事となって6年。まもなく臨月を迎え、これまでより一層「人間ってやつは」「組織ってもんは」あたりの興味関心が大暴走して大変です。アウトプットしないと病気になりそうなので、この場を借りて。

 

「もう、アイツ理解できない。」負の感情に呑まれる脳

人は誰しも人に理解されたい生き物。例外なく私もその一人です。一方で、「他人のことを理解するのは至難の業だ。」とも思い続けています。まして会社組織となると、年齢も性格も立場も違う人だらけ。「分かり合えない問題」はあちこちで勃発します。

「どう考えても分かるだろ」(呆)
「普通○○でしょ」(怒)
「なんでそうなるんだよ」(謎)

どう考えても/普通/なんで
・・このへんのワードを出し始めたらジ・エンド。『もう、アイツ理解できない。』で、負の感情に脳がジャックされている段階といっていいでしょう。
こうなった時に選択しがちな人間の行動傾向は次の2つといったところでしょうか。
①理解できないまま衝突する
②苦手なので避ける
人によって傾向が二分しそうですが、いずれも状況は平行線です。私は長年①の疲れに悩んだ口です。

そもそもなぜ人は分かり合えないのか?どう違うのか?これらの問いにはいくらか向き合ってきた方だと思います。このコラムでは、個人的にもっとも本質に近いと思えた情報一つに絞り「人が分かり合えないメカニズム」を解き明かしていきます。

「ベテランが新人に花見の企画を頼んだ。」という、やさしいシーンを想定し、二者のすれ違う理由を、今回はダメージレスなセーフティーゾーンから私貞光が実況します。彼氏彼女・旦那嫁・同僚etc..わかり合いたいのに分かり合えない相手がいる全ての人に、届きますように。

 

人が分かり合えないメカニズム

登場人物

新人  :様子を伺い、強気に飲まれる。波風立てないただの優等生さん
ベテラン :やるか、絶対やるかの二択。しのごの言わず系さん
超絶一般化してすみません。ここはわかりやすさ重視で抽象化します、ご容赦ください。

花見の乱 (概要
『起』ベテランが新人の商談に同行
3月中旬。新人の商談にベテランが同行中の時こと。
『承』得意先との花見の企画が持ち上がる
お客さん「そろそろ桜の季節ですね。御社の近くは桜の名所じゃないですか。花見をしましょう!」
ベテラン「いいですね!やりましょう。(新人さん)、段取りよろしく!」(ワイワイ)
『転』段取りを頼んだ若手から音沙汰がない
3月下旬。そういえば花見の報連相がありません。先行きが怪しいです。
『結』怒るベテラン
何か進行に不具合があれば当然相談してくるだろうと思っているベテランさん。音沙汰がない=新人が忘れているか手を抜いていると思っていたので、叱ります。絵にするとこうです。

ところが、実際に起こっていたのは下記でした。

新人は、忘れているわけでも、手を抜こうとしているわけでもなかったのです。人知れず悩んでいたのでした。進め方がわからず、相談する勇気がない状態の人に「進めろ!」と叱れば、どうなるでしょうか。段取りが一向に進まないどころか、花見以外の別の仕事で同じ状況になった時、むしろもっと相談しなくなりそうです。なぜ、人はこうもすれ違うのでしょう?その理由は、両者が持っている「歪んだ思い込み」にあります。みてみましょう。

 

ベテランの歪んだ思い込み

新人の歪んだ思い込み

ここで一番厄介なこと。それは、真ん中の列が本人も自覚なし・無意識レベルで起こっているということです。認知バイアスと呼ばれる、思考の癖、いや「脳の手抜き」という方がわかりやすいかもしれません。
ここからは、「無意識の心理」と呼ぶことにします。花見の乱は、実際に社内で起こったケースをモデルにしているのですが、新人に自分側の「無意識の心理」を埋めてもらうのに30分以上かかりました。そして、埋めた後にようやく「自分のことながらつっこみどころ満載ですね。これはマズイ。もっと早く相談するべきでした」と、言ったのです。人間、自分のことですらこんな調子です。

新人は、「できるのにやらない」と手を抜いている状態ではなく、「(まだ)できない」という能力の問題だったということ。ベテランサイドもここまで客観視できていれば「叱る」と「教える」の取り違えをしなく済んだかも知れません。人間は、「自分が無意識レベルでできることは、相手にとっても簡単なことだ。」という大きな勘違いをしがちです。上司と部下のすれ違い原因No.1と言っていいと思います。

 

ここでのポイントは3つです

・人は誰しも歪んだ思い込みがあること

・ほとんどの人間が自分の歪んだ思い込みに気づかないで生きていること

・その状態で人は人と関わっているということ

 

「バックグラウンドが違うから考え方が違う」ではどこか釈然としない。

国籍、宗教、性別、部署、家庭環境、世代、、

「バックグラウンド違えば、考え方が違う。」ここまでは、多くの人が辿り着ける領域だと思います。ただここまでの理解だと「自分と相手がなんとなく違うことはわかっても、どこか釈然としない。」のではないでしょうか。バックグラウンドが違えば、”なぜ”考え方が違うの?という問いにまでは、答えきれていないからです。

そこで今日は花見を例にその問いに答えてみました。人間の違いを地下3階まで俯瞰するとこういうことになります。

バックグラウンドが違えば、”なぜ”考え方が違うの?」その答えは、バックグラウンド(地下一階、地下二階)が違うと地下3階に直接影響を与えるからです。すれ違いの根本原因は、この階層です。ですが現実を見ると、ほとんどの人間が、一番上の階層だけ(それもなんとなくの認識)で人と関わります。地下3階まで想像しながら人と関わってます、みたいな猛者はそう多くないでしょう。

 

気になるアイツと関係性を変える4つのステップ

それではともかく相手の「無意識の心理」を理解するよう努めれば良いのかと聞かれたら、個人的な答えはノー。順番がとても大事です。

STEP1:自分の「無意識の心理」を観察する(歪んだ前提が見つかると面白いです)

STEP2:相手の「無意識の心理」を観察する

STEP3:関わり方(聞き方、言い方、言う内容など)を変える

STEP4:関係性が変わる

劇作家の平田オリザ氏は、対話が日本で起きにくいのは「同じ前提に立っている」と思っているからだと説く。「互いに分かり合えていないことを認める」ことが、対話に欠かせないとしている。

引用元:『他者と働く』

具体的なアクション例2つ

【1】根本治療

インビジョンではコーチ制度があります。「自覚のない、無意識レベルで起こっている思考の癖」を客観的に観察するトレーニングを行う仕組みです。自分の思考を地下3階まで客観視する、根本治療です。

目的 :能動的な学習の促進

コーチ:自分を客観視するためのサポーター

内容 :下記のフレームでコーチングを実施

【2】すぐにできるコミュニケーション上の工夫

いきなり地下3階まで潜るのは息が苦しいという人もいるでしょう。そういう人にもすぐできる方法があります。自分と相手で、「同じ構造物をみながら話す」こと。

空中戦で会話をすると、脳に浮かぶ映像が違います。偏差値が20違うと、話が噛み合わないと言われるのはこのためです。この場合、強制的に同じ映像をみながらはなすとスムーズに話が運ぶことは多いです。想いの強い経営者さんほど、言葉と熱量で人を動かそうとするけど、なかなか伝わらない、そんな経験があるのではないでしょうか。インビジョン社では社内の情報は構造物だらけ。参考に載せておきます。

社内の掲示板はイラストと構造物がメイン

(小さくて恐縮です、雰囲気だけでも)

ものは試しに

一度地下3階まで潜ってみるのも面白いかもしれない、という方。紙とペンを用意。大なり小なり今日あった「モヤっとした事実」を思い出して、花見の図を参考に、自分の「無意識の心理」を構造化してみてください。できたら、次に相手のそれも。いつしかすれ違いの根本的な原因は、互いの脳の手抜きなんだな、とわかってきて滑稽に思えてくることがたくさんあります。それでは今日も、ごきげんな1日を〜!

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