血の通ったチームをつくるべく、日々組織に向き合っている人事・経営者の皆様、初めまして。この記事を担当させていただきます、インビジョン戦略人事の坂牧です。新卒から戦略人事チームの立ち上げを経験するという比較的珍しい配属パターンで、これまで組織と人間にフルスロットで向き合ってきました。
立ち上げからずっとコンビで一緒にやってきたCHRO(最高人事責任者)の貞光が、来月から産休に入るということで、じんわりした気持ちの今日この頃。生命の神秘たるや本当に不思議で、男女のX染色体について調べ始めた私ですが、今回は”戦略人事を育てるには何が必要なのか?”というテーマで語っていこうと思います。
「戦略人事」という言葉、どうやら最初に言われ始めたのは1997年頃。「人事はもっと戦略的であるべきだ」というアメリカの教授デイビッド・ウルリッチさんの提唱により「戦略人事」という言葉が誕生。近年日本でもトレンド的に広まっています。
世の中で戦略人事の重要性がうたわれ、必要だと考えている経営者や人事の方も多いはず。実際に戦略人事の重要性を感じている企業は全体の9割です。
しかし実際に機能しているのはたったの3割という日本企業の現状。なかなか由々しき事態です。
戦略人事を配置してみた(もしくはしようと思ってはいる)ものの、実質的な戦略人事が育たない。機能しない。戦略人事を機能させるポイントを情報としてとってみても、イマイチ抽象的でピンとこない。答えが見えない。いったいどうしたら戦略人事が育つのか?ーーと悩む経営者や人事の皆さんに、私の経験や見解がちょっとでもヒントになれば幸いです。
戦略人事、戦略人事とは言いますが、そもそも戦略人事とは何者なのか。なぜ今、戦略人事が必要とされているのか?まずはここの共通認識をすり合わせておきましょう。
一言でいうならば、戦略人事=経営戦略達成のためのHR戦略が描ける、経営者のビジネスパートナー。
戦略人事最大の特徴は、経営戦略から一気通貫で関わり組織を動かすこと。
従来の人事は、「採用部門」「育成部門」などと部門が分かれており、経営陣から決定された物事を遂行する役割でした。しかしそれだと部門連携が多く意思決定に時間がかかるし、全社の課題を拾いきれない。
テクノロジーの発展、求められるビジネス環境のグローバル化、目まぐるしい早さで参入する新しいビジネスなど、多すぎる変化の中、企業が経営的にも生き残り、世の中に価値を提供していくには、いいチームであることが必須。いいチームをつくるには、中長期視点を持って組織全体にイノベーションを起こしていく戦略人事の存在が必要なわけですね。
さて、前提の話はここまでにして、ここから本筋です。
私自身、新卒から約5年間、「戦略人事」の肩書きを持って組織に向き合ってきましたが、本当に肩書きにふさわしい戦略人事と言えたのか?自分自身視座が上がり思うことは、否。今までの自分は戦略人事とは言えなかったんじゃないかと。
「今年度はこうしていこう」と決められた人事戦略を達成するために、具体的にどうしていくか?という人事施策の企画設計やディレクションは、数えきれないほどやってきました。組織図作成、採用・育成計画や研修の実行・目標評価制度の仕組み構築などあらゆる領域をカタチにしてきましたが、私ができていないことがありました。それは…
「人員・採用計画が自分で立てられない」。
皆さんはどうでしょうか?ここでつまづきがちな人事って、結構多いんじゃないかと思うんです。
経営陣からおろされた決定事項を実行するのではなくて、これを根拠を持って自分でできるかどうか。戦略人事と本当に呼べるかを判断する一つのわかりやすい指標になるのではないかと思います。
人員・採用計画を立てるには、”中長期的に会社はここの事業を伸ばそうと思っていて、ここが課題だから、このチームにこういう人がこのくらい必要だ。予算はこのくらいで。”という、会社の未来(志や事業計画)を理解し、現状の組織課題を把握しておく必要があります。つまりは経営陣と同じ視座が必要なわけです。
これができなかった私は、
「今期◯人採用するよ」とは伝えられても、「なぜ?」という質問には抽象的にしか答えられない。
まだ計画が具体的に下ろされていない中長期的な展望も、なんとなくしかわからない。今思えば選考で求職者に会社の未来展望を聞かれた私、かなり抽象的な返答をしていたんじゃないかなと恥ずかしい限りです。
つまるところ、基本的に数字をもとにして根拠をハッキリ答えられない、ザ・戦略人事”風”なヤツだったわけです。「今こういう課題があるから」という今を起点にした話はできても、「未来こうしていきたいから今こうする」という未来から逆算して話せないのが、”風”人事の特徴ですね。
戦略人事になりきれない要因は、きっと様々あるのだろうとは思いますが、私自身がそうだったように、世の中の人事に多いであろう要因をここで一つ取り上げます。
それはズバリ、お金周りへのアレルギー。
経営資源のヒト・モノ・カネ・情報の中のカネ領域への知見のなさ。
経営計画?自分には難しくてわからない、その領域は向いていないという思い込みです。
よく考えれば、私が人員・採用計画を含む中長期的な戦略を立てられなかったことも、未来の展望を根拠を持って話せなかったことも、お金周りへの理解がないからできなかったことでした。そしてそれを心のどこかでわかっていながら、自分には向いていないと距離をとっていたのです。
普通に考えれば「じゃあ、学べばいいじゃないか」ということになるわけですが、学んでみても頭に入らずモノにならない。ごちゃごちゃ言わずにもっと学べよ!と言いたくなる気持ちもわかりますが、人間ってやつはそう簡単にはいかないのも事実。この現象を掘り下げてみたところ、実はこの問題の本質は、向き不向きでも知識の不足でもないことがわかりました。
なぜ、お金周りを遠ざけていたのか、これを説明するには、人間の無意識領域まで言及する必要があります。戦略人事に限らず、お金に関する自己破壊的な行動の要因の全てがこれです。(浪費癖、過度な不安、ケチなど)
私の場合は、お金の問題で親が不仲になったことによる「お金=争いを生むもの」というシナリオが作られていました。潜在的に「お金=悪」だという概念を持っているわけなので、当然お金のことを避けるようになります。私が経営計画を理解できない根本的な要因は、まさかのここにあったのです。
そんな自分に気づいた私は、「いやいや、お金って悪いものじゃないじゃん」と、思い込みを手放すことができました。結果、不思議なことに、私は経営計画を理解することが面白くてしょうがなくなったのです。いやはや、我ながら驚きます。ちょっとそこのスイッチが変わっただけで、勝手に行動が変わるのですから。人間の無意識たるや、本当に凄まじい力を持っていますね。
戦略人事は、組織にイノベーションを起こす筆頭役です。
会社の計画を理解して、未来に向けて「こうしていったらいいのでは?」と逆算していく。
戦略人事の脳内が、未来のチームを作っていく、こんなの面白い以外の何者でもありません。
そのためには経営計画を含めた自社理解と中長期視点が必要なわけですが・・・・
そこにおもしろさを感じられるか否か。
知識の有無を超えて、その奥には案外無意識の作用が働いている場合が多いのです。
お金に対してネガティブな教育をされがちな現代の日本では、特にこの傾向は強いでしょう。
無意識領域の固定観念を壊し、経営の面白さを体験していく。
これが今回考察し、私が結論づけた処方箋。人間とは心を持つ生き物であり、知識のインプット云々ではどうにもならない側面を持ち合わせているもの。
小手先の方法論ではなく、人間ってやつの解像度をあげながら、いいチームを一緒につくっていきましょう!
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私たちは、世界最古の血筋を今日まで承継する国、100年以上続く老舗企業の数が世界一の国・日本に生まれ、働いています。歴史に学ぶと、いつも日本は「チーム戦」でした。
ところが今日の世の風潮は「チーム/組織<個」。自分のことしか考えていない、忠恕の足りない人が多い現代に、日本の根本的危機を感じずにはいられません。
いいチームをつくるには、原理>方法論。人間界普遍の原理原則をおさえた上で、方法論を学ぶことが大切です。
琴線に触れるものがあれば、是非とも対面でお話を訊かせてください。
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