前回のコラムを書き上げた数週間後、私はオフィスにいた。
やはり左隣には、我が愛すべき上司の武田和真が今日も鎮座している。
今日の鎮座っぷりと言ったら、右に出る者はいなそうだ。
コラムのRMを確認したところ、2023年11月28日担当Kemiとなっている。
以前の私であれば、面食らっていたが、今は違う。これくらいでは動じない。
さて、ここからが勝負の時。私は臆することなく武田和真に問うてみた。
「武田さん、採用動画のコラムってこういう内容入れたら良いとかありますか?」
「おーん、採用動画だから、やっぱり採用動画のことは書いた方が良いよね」
ここまではある程度想定内だったが…
完全に意表を突かれた。デッドボールを覚悟していたら、後ろからアンパイアに叩かれた気分だ。
それでも、私はコラムを書かなければならない。果たして書けたのだろうか。
しかし、皆さんがこの文章を読んでいるということは、つまり、そういうことなのだろう。
どうか、もう少し私の文章にお付き合いいただきたい。
さて、採用動画とはどういったものを指すのだろうか。
教科書的な言い方をすると「企業が仕事内容や職場の様子などを動画にしたもので、求職者に対して会社への理解を深めてもらうもの」という感じだ。
具体的に挙げてみると、
・ 企業紹介動画
・ 説明会動画
・ サービス紹介動画
・ 代表挨拶動画
これらがメジャーなものであろう。
インビジョンの他社と一線を画す採用動画の一例としては、会社までの道案内動画であろう。
最寄りの中目黒駅から会社までの道中、うなぎパイで有名な企業である春華堂との出会いのやり取りを
「忠恕」というワードをテーマに話しているという内容だ。
見てもらうとわかるが、道案内動画にも関わらず、道案内は一切していない。
正直なところ、最寄り駅から会社までの道のりはGoogleマップで調べればわかるし、動画を見ていれば
その道通りに行けば良いのだから、殊更説明する必要はない。
であれば、道案内中に自社に関するエピソードを盛り込んで、自社のことを知ってもらおうというのが、
インビジョンの試みだ。
実際に、この道案内動画ではないが、一つ前の道案内動画を見てインビジョンに応募して入社した者もいる。
当の本人は、最近までその動画を作ったのが同期入社の私だとは知らなかったようだが…
実際に道案内動画が自社の採用に繋がることもあるという稀有な事例の一つであるが、ぜひご参考いただきたい。
こと採用動画に関しては、近年になって新しく出てきた手法ということではないが、コロナ禍の影響により
企業と求職者との直接対面する機会の減少や動画編集のブームによって、より採用動画という手法が重宝された
という表現の方が近い。
そのため、多くの企業で採用動画は使用されているし、採用が成功した企業の6割以上が動画を活用しているという
データもある。
ただ、多くの企業が急いで導入した結果、どれもこれも似たり寄ったりのコモディティ化が起きているのも事実だ。
なんとなくの綺麗な映像に良い感じのBGMとナレーションをくっ付けたもので、その企業らしさが薄まってしまっているものも少なくない。
その企業の良さを求職者に伝えようと動画を用いた結果、かえって良さがぼやけてしまい、求職者にきちんと伝わっていない現象が起きているということだ。
現代版「火に油を注ぐ」とは、まさにこのことかもしれない。
前段で採用動画の現状を述べたが、とはいえ動画という手法が有効であることには違いない。
同じ内容でも文章と動画では求職者への伝わり方は異なってくる。小説と映画では同じコンテンツでも
伝わり方が変わってくるのは言うまでも無い。
また、現代の求職者、こと新卒に関しては動画に対しての順応性が高い。Youtubeにおいて、10代から30代の
利用率が8割超えというデータがその証拠の一つである。
しかし、普段から動画を見慣れている世代に対して、企業理解が促進される動画を提供するのはなかなか
ハードルが高いと思われる。彼らは普段から編集技術が高い且つ自らの好みの動画を多く目にしているため
かなり目が肥えてしまっているのだ。
それっぽい雰囲気のある動画では、求職者に伝わらないし、編集技術が微妙であれば、すぐにブラウザバックされて
しまうだろう。
上手く活用すれば求職者の理解促進や採用に繋がる反面、下手に活用すると全て裏目に出てしまうため、
それだけ採用動画の重要性は高いと考えられる。
採用動画の現状の章で、採用動画のコモディティ化が起きていると述べた。一見ネガティブな印象を持ってしまうが
見方によっては、どの企業でもある程度のクオリティの動画は作れるということでもある。
幸いにも、動画編集技術の需要が高まったことにより、比較的どんな人でも動画編集が出来るような仕様になって
いるし、動画編集のやり方も無料で知ることが出来る。
では、どこで他の企業と差別化を図るかというと、その企業が持つらしさである。
その企業だけが持つ提供価値や、その企業だけが持つらしさは絶対に真似できない唯一無二のものであり、
真似されてはいけないものだ。
むしろ、この「らしさ」が伝われば、下手にかっこいい映像やそれっぽい編集にする必要はないと考えられる。
その企業において重要な「らしさ」がボヤけてしまっているなと感じている人は、ぜひ「おダシ診断」を
受けて、現状を知ることから始めてみてはいかがだろう。
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ここまで、採用動画について書き連ねてきたが、採用動画を上手く活用することで
他社との差別化が可能になり、求職者にも企業のらしさがより伝わるだろう。
企業にとってはミスマッチの減少、採用コストの削減にも繋がり、求職者にとっては自分が本当に
入社したい企業が見つかりやすくなる、就職活動の効率化に繋がるだろう。
逆に下手に取り入れてしまうと、全くの逆効果にもなり得るということも忘れてはいけない。
車や包丁も使い方を間違えれば、人の命を奪ってしまうこともある。
採用動画が直接的に人の命を奪うことは無いだろうが、ミスマッチによる転職や退職ということになれば、
企業と求職者の双方の時間とお金を奪うことになる。
採用動画を上手く取り入れて、自分たちの味方につければ、企業の採用活動における一つの強みになるはずだ。
まさか「採用動画 is on your side」という言葉はそういう意味だったのか。
我が愛すべき上司の武田和真への畏敬の念がさらに高まったところで、このコラムを締めたいと思う。
Kemi