うっかり記憶を置いてきてしまった飲み会の翌日。出社するとはじまる伏線回収。例のごとく見せられる昨夜の動画の再生ボタンを前に、妙な緊張がはしる。ゴクンと唾を飲みながら(頼む、なにも起きないでくれ)と一応は祈る。「昨日はトイレから出たと思ったら、近くのおじいちゃんたちに混ざって昔からの親友みたいに盛り上がってましたよ。」とメンバー。(まあ、、よしとしよう。)動画の中のごきげんな自分を前に、それなりにはやるせない気持ちになる。
楽しむというファクターにステータスを全振りしがちな自己理解を持って、昼間は強烈に意識していることがあります。『考えたいことを考えるのでなく、考えるべきことを考える』。これです。
HR業界に足を踏み入れて9年。散々でくわしてきたのが、「応募がこない」というSOS。どうにか突破しようと努力しつつも、かけた労力に成果が見合わない。ぐったりする人事を多くみてきました。例外なく『考えたいことを考える病』にかかっていると言えます。
気を抜くと、人は考えたいことに走ります。高確率で空振ります。私たちがそうでしたから。散々やってきました。設立から数年で自社の採用コンテンツを軽く100本くらいは世に繰り出し、うち95本はボツってたと思います。『考えたいことを考えた』結果の迷走をいくつかお見せします。
【タイトル】濃いめです
【企画背景】濃い人に出会いたかったから
【結果 】応募19→採用0
【タイトル】筋肉道場
【企画背景】筋トレ民はごきげんだから
【結果 】参加8→採用0
なんということでしょう。大棚違いです。おかげさまでPV数は伸びたものの、全く採用できませんでした。敗因は、採用戦略の根本的な課題をスルーしていたことです。(まあ作り手は楽しかったけどね)
解決の方法は、非常にシンプル。世の中の採用トレンドを探す必要も、付き合いのある代理店に新しい企画を持って来させる必要もありません。それはバンドエイドみたいなもんです。「どうしたら応募がくるのか」という問いを、「なぜ応募がこないのか」に再設定する。『考えたいこと』でなく『考えるべきこと』とは、実に単純で明快です。
『なぜ応募がこないのか』に問いを設定できたとして、『考えたいことを考える病』のトラップは引き続き我々を苦しめます。『求人原稿の内容が原因だ』『効果的な媒体を使っていないからだ』とか、決めつけにかかるわけです。課題設定を決めうちにかかると、解決策がズレにずれます。下記の経験者さんは多いのでは?
▼決めうち人事さん
【課題設定】なぜ応募がこないのか→求人原稿の応募のハードルが高いからだ
【解決策 】「日払い推し」「未経験OK推し」「経験不問」あたりを訴求しよう
まずいことになりました。あなたの求人原稿、めちゃくちゃ散らかってます。この人事さん、このままだと「風通しが良い会社です」などという、なんともぼんやりした、誰の心にも届かない言葉も原稿に放り込みかねません。
これ以外にも、なぜ応募がこないのか→効果的な媒体をつかっていないからだ。のバージョンもありがちさんですね。間違っていると伝えたいわけではなく、”それ以外にもあるのに”決めうちにかかる思考のクセ、を問題視しています。
この風潮を助長してきたHR業界の人間も、実によくありません。代表してHR20年選手のインビジョンのベテランがお詫び申し上げます。
酔っ払ってばかりいてもお母さんに申し訳ないので、ゆるい感じでピラティスに通っています。「普段使わない筋肉も、意識すると自然と使えるようになるんですよ。神経がつながるんです」なんて言われた時は、(そんなことあるか!)と思いましたよ。まあものは試しに続けました。すると20回を超えたあたりで、日常に不思議なことが起こります。「あれ?まっすぐ立つってこういうこと?」。体の使い方は、頭の使い方。頭の使い方って、無意識下だと異様に偏っているんだと思います。私だけでも、あなただけでもありません。
人は大いに偏っている生き物です。この辺りについて語りたい欲望はこの辺で抑え、本題に戻ろうと思うと思います。
思考の癖は手強い。そう思ったところで、癖を直すまで地道にトレーニングしてられっかって話です。そこで。「思考の癖を強制解除するアイテム」をつくりました。
まあ見てください。大抵人は、右側から考える癖があります。
課題設定の幅が偏るのはそのせいです。無意識に「原稿を改善すべきだ。」と思い込むことで、「原稿に原因がある」と結論づけてしまうということです。
しかたない。それならば、気付かぬうちに漏らしてしまいがちな根本課題含め、あらかじめ全部テーブルの上にあげてしまえ!としたのがこれです。左からスゴロクのように進めば、ほら思考の癖を強制解除できるでしょ。
広げたらキリがないので、実用性を最重要とし、まず大抵の採用課題はこの中にある、というものに絞りました。
左から、採用担当者のあるある課題6つを起点に、右にいくにつれそれを引き起こす根本的な課題を深掘りできるフレームです。
▼あるある課題6つ
①応募がこない
②欲しい人材からの応募がこない
③面接にこない
④内定辞退率が高い
⑤離職率が高い
⑥戦力化しない
⑦採用効率が悪い(時間、お金的リソース)
さあ!それでは紙とペンを用意。ここから実物を印刷して、左から進んでみましょう。
どこはできていてどこが弱いか、まずは直感的に1分で。次に15分かけて見直しましょう。人事MTGなどあれば、会議に持ち込むもよし!いつもよりちょっと面白くなるかも。
課題が特定できたら、解決策の方向性までわかるようになっています。やってみると、課題が複数=つまり解決策も複数出てくるかもしません。そんな場合は、次のプロセスで整理しましょう。
①解決策の重要度を可視化(重要/そこそこ重要/そこまで、など)
②解決までスピードを可視化(すぐできる/まあまあすぐできる/結構時間がかかる、など)
③解決までのコストを可視化(0円でできる/頑張れば出せる/現実的に無理)
④①を起点に、②と③を見ながら今の会社にとっての優先度をつける
⑤④の順番で改善策の中身を企画する
言わずもがな、企画の中身が特に大事です。特に、会社の真ん中(理念、志、価値観)が定義されていない企業は、企画が点でチグハグ、場当たり的になります。見る人の心に響かないまたは、入社して船に乗るより漕ぐような人材になることは稀でしょう。
そういう会社は問答で「自社の魅力の棚卸し」からですスゴロクを作っておいてなんですが、最優先すべきはここだという会社が9割、といっても過言ではないかもしれません。
①思考の癖を強制解除、根本課題にたどりつける
②短期的な”数”の採用から脱却、”良いチームを作るため”の採用の糸口が見える。
③人事の会議がいつもよりおもしろくなる(かも)
課題特定スゴロクをやりながら「こんな観点で採用を考えていなかった」という声もあります。
採用を短期的な労働力として考えるか。長期的にチームを作っていくメンバーと捉えるか。100年続くチームづくりを目指し、採用を長期の投資と考える会社こそ応援したい。会社の歴史が長ければ長いほど、選ばれるだけの大きな強みがある。その一方で、気付かぬうちに凝り固まる思考の淀が多いのも事実。向こう100年に向け、まずは採用から、想いをカタチに!
RELATED POST
もっと記事を見る